夜シネマ「寝ても覚めても」

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こんばんは、「東京で生きる女」mt! です。

 

ある日突然、自分と全く同じ顔の人と出会ったとき、あなたはどうしますか?
ある日突然、愛した人と同じ顔の人と出会ったなら、あなたはどうしますか?

 

今夜紹介する夜シネマは、濱口竜介監督の「寝ても覚めても」です。
原作は柴崎友香さんで、主演は東出昌大さんと唐田えりかさんです。

 

(ここからはネタバレを含みますのでご注意ください)

 

唐田えりか演じる「朝子」と東出昌大演じる「麦」は出会った瞬間、恋に落ちる。
麦のよくわからない鼻歌に吸い寄せられるように彼を追う朝子の行動は、少しストーカーちっくだ。堤防で鳴らされた爆竹の音ともに二人の関係は始まる。
それから月日は経ち、放浪癖のある麦はある日ふらっと朝子の前から姿を消してしまう。
そうしてひとり残された朝子が出会うのが、麦と全く同じ顔をした東出昌大演じる「亮平」だ。
朝子は思わず麦が帰ってきたのではないかと思い、初対面の亮平に対して麦として接する。
しかし、当然、亮平は麦ではない。
初めは露骨に亮平を避ける朝子であったが、次第に二人は惹かれあっていく。穏やかな幸せが続く日々の中で、亮平の転勤に着いていくと決めた朝子。
平穏な日々の中、結婚目前にした二人の前には麦が現れる。
「あさちゃん」と微笑む麦を目の前に朝子は亮平の手を離す。

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とまあ、大体こんな感じに話は進んでいくのですが、後半にかけての朝子の狂気じみた行動はブーイングの嵐が起きるかもしれません。
ただ不思議なのは、映画の中に入り込んでいくと朝子の行動こそが最もまとものように感じるのです。
おそらく誰よりも無垢なその心は、理性や常識を持ち合わせた人には理解し難いものに映るのではないでしょうか。

 

物語のラストスパート、朝子が麦の手を取った瞬間の亮平の顔には鳥肌が立ちました。
一緒に過ごした月日、育んだ愛ゆえの信頼、期待、余裕全てを一瞬にして奪われる。
しかも自分の目の前で。

あまりにも残酷なシチュエーションですが、全く大袈裟ではないリアルな失望、絶望を東出さんの演技から感じました。

それから、麦の手を取った朝子は、海を目の前に「ここから先はいっしょに行けない」と麦に伝えるのですが、麦もまた朝子と負けず劣らず無垢な人間なので本当に恐ろしい。
感情を波立てることなく「わかった」と答える麦は、【ひとりにしない】という朝子とのかつての約束を全うしにきただけだったからです。
二人は違う方向で歩き出し、朝子は転勤先の亮平の元へ向かいます。

 

こんな書き方をしてしまうと朝子がものすごく自分勝手で虫のいい人間のようですが、私は朝子をどうしても悪者にしたくない。
作品の中でも非難のされる彼女の行動は、いつだってまっすぐな理由があります。弱さと向き合う強さがある。

物語の最後、朝子と亮平は雨で水かさの増した汚い河を家の窓から二人眺めつづけます。
この先ずっと信用できないと朝子に断言する亮平と、分かってると、それでも好きだという朝子。二人の人生はこの先も、流れる河のように続いていくはずです。
いつしか分岐しても、氾濫しても、ずっと続いていくはずです。

人生を大きく変えてしまうのは、ある日突然のことなのかもしれませんね。

 

それでは、おやすみなさい。

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